オンリーワンの士業事務所になる方法

士業

オンリーワンとは何か

「ナンバーワン」と「オンリーワン」はどちらも事務所として目指すべき考え方ですが、まずは、オンリーワンを目指すことをお勧めします。


ナンバーワンというのは、ハンバーガー業界におけるマクドナルドのような存在を目指すことです。
そうなるためには、経営規模や資金力の大きさなども重要になってきます。

 

オンリーワンは、他にはない、そこでしか絶対に食べることのできないハンバーガーを提供するお店を目指すことです。
オンリーワンを目指しているのに、マクドナルドとまったく同じ戦略・戦術をとるハンバーガー屋さんはないですよね?
オンリーワンは、独自の戦略・戦術などが色濃く反映されたものです。

 

ところで、ここまでは差別化とオンリーワン化をあまり区別せずに、他の事務所にはない要素のことを大まかに「差別化」と述べてきました。
そのほうがわかりやすいと考えたためですが、本当は似て非なるものです。
少なくとも、僕は区別をつけて考えています。

 

差別化というのは、あなたの事務所の「内部」で決めるべき戦略・戦術や意思決定の方法です。


一方、オンリーワンというのは、「外」からあなたの事務所を見た時に、いかに他とは違う独自の存在に映るかで決まります。


差別化は主観の問題であり、オンリーワンは客観の問題と言い換えることもできます。
あなたは、自分では差別化ができていると思っていても(主観)、お客様が見たときに差別化していることが伝わらない(客観)と意味がありませんよね。


そのため、オンリーワンになるためには、差別化しているんだと見てもらうための方法や、差別化したことで生まれる価値をお客様に納得していただくための事実が必要となります。

オンリーワン化ができると…

オンリーワンの存在として、お客様から見ていただけるようになることで、あなたの事務所はどのような恩恵を受けられるでしょうか?


まず、オンリーワンなので当たり前ですが、お客様は他の事務所では同じサービスは受けることができませんよね?
そのため、他の事務所が競合しません。
競合がいないので、価格も無理に割引する必要がありません。


あなたの事務所のオンリーワンのサービスがお客様の求める価値に見合ったもので、その価格も妥当だとお客様が判断してくだされば、その他のサービスとの比較をすることなしに、お客様はあなたに業務を依頼してくれるようになります。


他の事務所との競争から抜け出すために、オンリーワン事務所を目指しましょう。

士業がオンリーワンになるために必要なこと

オンリーワンになるためには、

①事務所の戦略的な差別化


②差別化していることを、お客様へうまく伝えること


③差別化によって生まれる価値を納得していただくための客観的な事実

の3つが揃うことが必要です。

事務所の戦略的な差別化

これについては、前の節までで十分な説明をしてきました。
大まかにおさらいをすると、専門業務に特化すること、取扱数日本一といった実績、縦の動き、他事務所にない専門業務を活かせるサービスを持つこと、専門業務に対するあなたの想いやあなた自身の個性が、差別化の要素でした。
このすべてが、それなりにできていれば、すでに他の事務所とはだいぶん差別化ができていると言えます。

差別化していることを、お客様へうまく伝えること

①のような差別化要素は、そのままではあなた(の事務所)の中でしかわかっていないことです。
その独自性をお客様にうまく伝えることが必要です。


そして、お客様に伝える際には、論理の流れというものがあります。
ここでは、ホームページで差別化要素を伝える際のポイントをご紹介します。

 

どのような夢があるのか(どのような世界を実現したいのか)が、まず最初に伝えるべきものだと思います。


するとお客様は、そんな夢を持った人はどんな人なのか、あなたという人のことが気になりますので、あなた自身のことを手厚く伝えます。


その次に、夢を実現するための事務所の業務、活動の内容をご案内します。


さらに、業務・活動の内容や成果を裏づけるために、業務での実績を示します。


しかしこれだけでは、他の事務所よりやや差別化されている程度にしか思ってもらえません。
そこで、「縦の動き」を入れます。


たとえば、「毎月1回、30名が集まる起業家セミナーを開催」といったことや、「会社設立をお手伝いしておしまいではなく、融資を睨んだ会社設立ができます」といったご案内をします。


もちろん、内容が揃っていることだけでは十分ではありません。
それぞれの要素がわかりやすく見えるデザインかどうか、論理の流れに沿って読んでもらえるようなナビゲーションになっているかなども重要です。

差別化によって生まれる価値を納得していただくための客観的な事実

①はそもそもあなたの主観に基づく戦略の話、②にしても、お客様にとっては、あなたが一方的に伝えようとする話にすぎません。
その真偽さえ確かめようもない話です。


「自称オンリーワン」ではいけないのです。
そこで大切になるのが、客観的な事実です。


あなた(と事務所のスタッフ)以外の人によって、あなたの業務・活動、独自の価値を証明してもらう必要があります。


一番伝わりやすいのは、お客様からの声でしょう。
僕の場合は、会社設立や創業融資をお手伝いしたお客様から、僕の事務所のことやサービス内容などについてのコメントをいただき、ホームページに目立つように掲載しています。


ネット販売のお店のホームページに、取扱商品やお店のサービスについての「お客様の声」を掲載してあるのはよく見ますよね。
それだけ重要なものなんです。

「お客様の声」を伝える時に気をつけること

 

「お客様の声」をホームページなどに掲載しているお店や事務所はたくさんあります。
しかし僕の印象では、うまく効果的に使えている事務所はあまりありません。


何が問題なのか?


お客様の声をいただくこと、それ自体が目的になってしまい、何のためにお客様の声をいただくのか、その声をどのように活用するのかを、戦略的に考えることなく、ただ漠然とお客様の声を集めているだけになっているのが問題なのです。


戦略的な「お客様の声」の伝え方とはどういうことか、おわかりになりますか?


「お客様の声」が、あなたの事務所の「夢」や「戦略・戦術」、そして「ターゲット顧客」と、論理的にリンクしていることが大切です。


たとえば僕の事務所の場合、会社設立業務のお客様は、まだサラリーマンとして会社に勤めている人です。
そんなターゲット顧客に伝える「お客様の声」として、「忙しい方には間違いなくウェイビーさんがお勧めです」といった内容を、お客様からいただくようにするのです。


あなたの想定しているターゲットがシニア層なのに、20代の若者の「お客様の声」を載せてもダメですよね。


あなたが目指している「夢」や、独自性を狙った「戦略・戦術」に関しても、ターゲット層に共感してもらえるように伝えるためには、ターゲット層と同じ想いを抱くお客様から、あなたに対する共感の言葉をいただくのです。


お客様は、あなたより、自分と同じ境遇にあるお客様に親近感を抱きます。
「お客様の声」は、あなたやあなたの事務所をオンリーワンにしてくれる最高のコンテンツなのです。

オンリーワン化のもう1つの方法

これはお話しても、実際に体験した身でないと、現実的に考えづらいかもしれませんが、間違いなく僕の事務所には起きた、一種のご褒美のようなオンリーワン化のお話です。


それは、「マスコミやメディアに、その道の専門家として取り上げていただく」ことで起こります。


「いやー、自分には絶対無理だし、そんなうまい話はない」


そんなふうに思うかもしれません。
しかし、どなたにも起こる可能性があることは間違いない話です。


僕は、自分からマスコミやメディアにプレスリリースを送って取材していただいたことはありません。
皆さん、僕のホームページを見てくださって、お電話やメールで取材の依頼をくださいます。
これは本書で紹介した成功法がつながり合って結実した、ご褒美のようなものなのです。

・業務を専門化し、あなたの人間性を打ち出す

・さらに、夢を語り、夢の実現のためにいろいろな縦の動きをする

・お客様にとってわかりやすく見やすい内容のサイトを作る

・SEO対策にも力を入れ、検索結果の順位を上げる

これらの活動は、専門家を探しているマスコミやメディアの方の目にもつきやすく、他の事務所にはない何かを感じてくださったのでしょう。
僕は、実際に、開業から10か月目くらいに、中国のCCTV(NHKに相当するテレビ局)の日本企業特集の中で、創業融資の専門家として取り上げていただきました。


また、合同会社設立の専門家としてリクルート発行のR25や、ヤフーニュースに大きく取り上げていただいたり、みずほ総研発行のFoleに取り上げていただきました。
その他にも、さまざまな媒体での取材の依頼を、現在進行形でいただいています。

 

マスコミやメディアに紹介されることは、差別化、オンリーワン化のための効果的な手段です。


自らプレスリリースを作って、マスコミやメディアに取材してもらえるよう働きかける人もいらっしゃいますが、僕は実力がつかないうちにプレスリリースを書いて、運よくメディアに掲載されたとしても、それは本末転倒ではないかと思います。


まずは、メディアからも声がかかるような差別化やオンリーワン化を本業で実現できるよう注力するのが本筋です 。

 

起業、それは〝非常識〟ではなく〝常識〟である

 

一般的な士業のやり方とは対照的な方法をとってきたため、よく〝非常識〟と言われてきましたが、僕自身はもちろん、それが本当に非常識だとは思っていません。
独自性がある効果的な方法をとったにすぎません。

一層オンリーワンになっていく方法

僕の事務所がメインにやっている専門業務は2つです。


会社設立業務と創業融資業務でした。


今までは、限られた行政書士の各業務の市場の中で、どうすればお客様から選ばれて依頼をいただけるのかということや、他の事務所との競争に勝つ方法などを中心にお話ししてきました。


しかし、ここまで読んでくださったあなたには、ぜひもう一段上の大きな視点を持っていただきたいと思います。


それは、あなたの専門業務の市場規模そのものを大きくするという発想です。


これはどういうことでしょうか?


たとえば会社設立ですと、年間約10万社が新しく設立されます。


この数が市場の最大値となって、会社設立業務をしている行政書士は、10万件のうちから1件でも多くの依頼を受けるために争います。


しかし、最大値である10万社という数が、たとえば倍の20万社になったらどうでしょうか?


極めて単純に考えると、会社設立の数=市場が2倍になり、あなたの事務所のシェアが変わらなければ、あなたの事務所への依頼も2倍になります。


これはすごい話ですよね。


会社設立の件数自体、つまり、市場そのものを大きくするという発想が大切なんです。

 

どうやって市場を大きくするのか

市場を大きくしようという発想を持ったとしても、それを実現していくのはなかなかに困難です。


国をはじめとする自治体や関係機関、企業、国民などすべての人の理解と協力を得ていかなければなりません。


このまま少子化が進み人口の減少が始まると、会社設立をする人の数は、普通に考えて縮小することが予想されます。
これでは、ジリ貧もいいところですよね。


人口を増やすことは、僕一人ではできません。
かといって、指をくわえて、この状況を傍観するつもりもありません。

 

そこで出てくる1つの発想として、これまで起業しなかった人を起業家にすることができないかという仮説があります。


それを実現するためには、2つの大切なポイントがあると僕は考えています。

 

①起業は素晴らしいことだという空気を醸成すること


②成功事例をたくさん作ること

 

この2つですが、これが簡単にはうまくいかない、ものすごく地道な取り組みになることは覚悟しています。


たとえば、「縦の動き」の実例として紹介した起業セミナーなどは、①のための取り組みとなりそうです。


しかしながら、起業セミナーの参加者募集で集まってくださる人は、最初からある程度、起業に興味のある人で、僕が背中を押さなくても遅かれ早かれ起業をする人とも言えそうです。
そうであれば、市場の拡大にはなかなかつながりません。

 

起業を考えたことのない人に、起業について考えていただかなくてはいけません。
新しい切り口で起業を提案する必要があります。

 

たとえば、シニア起業家、高校生起業家、主婦起業家などを増やせないでしょうか。
シニアからの起業というのは、今後、最も注目してよい層だと思っています。


サラリーマン生活を終えて、時間や経験、人脈、お金などの経営資源となるものを豊富に持っているシニアの方はたくさんいます。
高齢化で、シニア層は増えますので、①「起業は素晴らしいことだという空気を醸成すること」がうまくできれば、起業家は一気に増えそうですよね。

 

ここで大切なことが、②の「成功事例をたくさん作ること」です。


先行者のほとんどが失敗しているようでは、それに続こうという人は出てきてくれません。
逆に、先行者の多くが成功していて、しかも、能力的にも経歴も自分とそう変わらない人だということなら、何か自信が湧いてこないでしょうか?


僕がやろうとしていることが、まさにこれです。
新たな起業層を創造するために、また、その成功事例を数多く作るために、シニアの方向けの起業塾のようなことをやろうと考えています。

 

また、今後、日本企業は国際競争力を高めるために、国内の従業員をリストラしたり、新規採用を絞ったりする傾向は強くなるでしょう。
そうなると、そこそこの年齢でリストラに遭い、再就職も思うようにいかない人が増えます。
また、再就職をして給与が大幅に下がるくらいなら、かねてやってみたかった夢を実現するために起業する人も増えそうじゃないですか?
そんな人たちに、「起業」という選択肢を持っていただくことから、まず始めるんです。

 

さらに、視界をちょっと広くすると、まだまだ新たな起業家層はあります。

日本で起業する外国人は増えています。


高校・大学を卒業後、新卒で企業に入社することが難しい時代になりましたから、学生起業家が増えてもおかしくありませんよね。


こんなふうに、今までは起業を考えなかった層による起業が今後、増える可能性は十分にあります。

 

このような新たな起業層が、安心して起業できるようにしなくてはいけません。
日本では、まだまだ「起業は非常識」といった雰囲気があります。
そのため、起業を常識にする必要があります。

 

僕自身も大学を卒業して社会人経験もほとんどないまま、今の事務所を開業しましたので、カネ、人脈、経験がなくても起業でうまくいくんだという成功事例になろうと思っています。


僕が成功することで、「なんだ、あいつにもできるなら、自分もできる」とあなたが少し勇気を出し、起業への第一歩を踏み出してくださるきっかけになれれば、こんなに嬉しいことはありません。

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