銀行を含めた金融機関とは、あなたも個人として口座を持っているように何かしらの付き合いはあると思います。
しかし、個人で口座を持っている場合には銀行の利用の仕方としては、電気代、ネット代金などの公共料金の引き落としであったり、使用したクレジットカードの支払い、会社からの給料の振込先に利用するなどが一般的であって、口座以外で銀行を十二分に活用しているという方はなかなか少ないことが現実であると思います。
ですが、士業となって事務所を開設したのであれば、これまでのような口座だけを利用するようなお客のままでは、せっかく金融機関が日本中にたくさんあるというのに非常にもったいないことになってしまいます。
あなたの事務所と銀行との関係を親密にして、良好な関係を築いていくことで、結果的に事務所経営も安定し、規模も大きくできる可能性を秘めているのです。
では、士業が銀行と付き合っていくためにどのようなことを考えていけばいいかを少しではありますが、紹介していくことにしましょう。
銀行員とのパイプを作るように行動しよう
さて、銀行と付き合うためには銀行員とのパイプがなければ話が全く前に進みません。
ここで、これから銀行員とのパイプつくってくださいねとあなたが急に言われたところで、「一体どうやって銀行員の知り合いを作るのよ??」と思われる方が多いとは思いますので、どのように銀行員とお近づきになるかについての方法をいくつか挙げていきますので、参考にしていただければと思います。
定期的にお客様と一緒に取引先の銀行に緒に足を運ぶようにしよう
口座をその金融機関に持っていたとしても、仕事に関して何も関係ない状態でいきなり銀行に飛び込み営業のようなスタイルで訪問するのは、営業が得意な人以外は苦手な方がほとんどでしょうから、まずは法人のお客様が現在1つでもあるのであれば、その法人の社長さんと一緒に定期的に銀行を訪問してみるようにしましょう。
法人は金融機関から融資を含めて何らかの支援を受けている場合が多いですから、金融機関へ出向くことに不自然さはありませんし、あなたが法人のお手伝い又は顧問として一緒に伺いましたと行ったところで邪魔な奴が来たとは思われないでしょう。
またこの訪問を定期的に行って法人の現状を報告しておくことで、法人側にとっても金融機関からの信頼性が上がり、今後何かあったときの融資が受けやすくなるかもしれないといったメリットもあるわけです。
定期的とはおおよそ1か月ごとで毎月の経営状態を金融機関に報告するといったイメージで社長さんと一緒に金融機関に出向くようにしてみるといいでしょう。
これだけで、最初はあなたが誰なのかわからなかった銀行員に対して1年で12回もあなたは会うことができるようになるわけですから、あなたが強引にパイプを作ろうとしなくてもお客様と一緒に行くことで勝手にパイプが作られていくことになるのです。
お客様に紹介していただいて銀行員と知り合う
金融機関の人間であれば誰とでも仲良くなればいいというわけでもありません。
士業事務所は基本的に規模が小さなところが多いですから多額の資金を融資しているメガバンクなどよりかは地元密着を打ち出している地方銀行、信用金庫、信用組合の方が地域の特性も理解しているだけに結果的に事務所の経営に役に立つ可能性が高いでしょう。
その意味では事務所のある場所が地元の金融機関の担当者をあなたのターゲットとしていきましょう。
金融機関というのは常に新規で取引のできる相手を探しているものです。
銀行員が営業をしているイメージはなかなか湧かないかもしれませんが、渉外担当者という人達は毎日地域を回って新規取引先を開拓しようとしているわけです。
そこであなたが、ターゲットとした金融機関の担当者に紹介してもらえるように、既にターゲットの金融機関と取引のある方(お客様でも知り合いでもいいでしょう)を探しましょう。
いきなり飛び込んでいくよりも、紹介されて担当者と初対面をしたほうが印象は圧倒的によくなります。
特に紹介者の信頼が高ければあなたの信用もそれと同じように高くなりますので、そこでしっかりと今後の関係が作れるようにしてください。
紹介された金融機関に口座を持っていないのであれば口座を作るのもありですし、少額でも定期預金をすることで継続的に金融機関との関係をつくれるような体制を整えるようにするといいでしょう。
口座を開設してくれて、わざわざ預金までしてくれる、あなたのことを悪く思う担当者はいないはずですからね。
担当者との関係性を深化させよう
金融機関とのパイプができたので、これで一安心だと放置していては、せっかく作れた関係が意味をなさなくなってしまいます。
パイプをつなげることに成功したのであれば、その関係性を深化させるべく行動していくようにしましょう。
金融機関にお客様を紹介する
人間関係がより円滑になるためには、まずは相手と会う頻度を高くすることが最も効果的なものになります。
では金融機関の担当者と会う頻度を高くして、なおかつ感謝されるためにはどのようなことをすればいいのでしょうか?
それは非常に単純なことで、あなたが金融機関の顧客になるかもしれない人を担当者に紹介してあげればいいのです。
銀行はすでに顧客がいるわけですが、どのような銀行でも顧客全体の約2割程度が他に流出していくという現実があるわけですから、その約2割を埋めるための協力として、あなたが担当者に顧客を紹介してあげることができれば、担当者は新規顧客を開拓したことで評価は上がりますし、支店単位でみても新規顧客増加数が他の支店と比較して多くなれば本社からも評価されることになります。
このような金融機関の状況があるわけですから、あなたが顧客になる可能性のある方をたくさん紹介しているのであれば、担当者はあなたとの関係を絶対に維持しておくべきだと考えるでしょうから、必然的にあなたと担当者の関係性は密になっていくわけです。
担当者に自分のことを理解してもらおう
金融機関の担当者と仲良くなるのは、最終的にはお客様(仕事の可能性)を紹介してもらうことに尽きるでしょう。
ただ、お客様を紹介してもらうためには、単に人間的な関係で仲がいいだけでは紹介してもらうことはできませんから、担当者にあなたがどのようなことができる人物で、お客様を紹介をしてもらうことで紹介をした銀行の評価自体も上がるなと判断してもらわなくてはいけません。
ただ、話だけで私はこれができますよと言ったとしても説得力にはどうしても乏しいものがあることは、書類をたくさん扱っている士業である、あなたであればよくわかるのではないでしょうか。
そこで、あなたの信頼度を高めるために作成しておくとポイントが高いのが事務所の事業計画書ということになります。
事業計画書を作成して担当者に渡しておくことで、あなたの事務所がどのようなことが得意で、これまでどのような仕事を行ってきたのか、取引先としてはどのようなところがあるかなどを客観的に理解することができるのです。
士業の方であれば、お客様の事業計画書の作成を頻繁に行う方もたくさんおられると思いますので、そのテクニックを利用して一度自分の事務所の事業計画書を作成してみるといいのではないでしょうか。
特に用事がなくても近くに寄ったのであれば顔をだすこと
人間関係として相手と親密になるためには、何度も顔を合わせることが必要だということは既に何度がお伝えしていますので理解されていることでしょう。
ですが金融機関の担当者が頻繁にあなたのところに来るかどうかは残念ながらわかりません。
あまり来ないのであれば、あなた自身が出向くことで顔を合わせる機会を強引に作り出すようにすればいいでしょう。
とはいうものの、「何も用事もないのに金融機関を訪れてもいいものだろうか?」と思うでしょうし、そもそも相手に迷惑ではないのかとも考えるかもしれませんね。
その心配は無用であると言えます。
もちろん、あなたが金融機関の担当者と全く面識がない状態で訪れたのであれば、問題があるとは思いますが、既に何度が顔を合わせており、お互いのことを理解しているのであれば、仕事の途中で近くを通ったので挨拶として寄らせていただきましたと言えば、相手も嫌な思いにはなりません。
実際に営業をしていた方であれば理解できるでしょうが、最初から売りたいと考える商品を売り込むためだけに訪問していれば間違いなくお客様には嫌われてしまいますから、そのようなことはしませんよね?
もし訪問した場合に担当者が業務で忙しくて、あなたに対応するのが難しいと感じたのであれば、「時間がある後日にまたお伺いしますね」と一言いって店舗を後にすればいいだけで、全く臆病になる必要はありませんので安心して行動してみるようにしましょう。
金融機関も自分もハッピーになる関係を考えよう
金融機関との関係性を継続するためには、あなたと金融機関の両者が満足する関係を作り上げなければいけません。
協力関係となったものの、どちらか一方が圧倒的に得をするような関係では一方から不満がでて間違いなく短期で関係が破綻してしまうからです。
ここではあなたも銀行も笑顔でいられるために気を付けておくといいポイントをいくつか紹介していくことにします。
紹介された案件は選り好みしないことが大切
金融機関と強固な関係を築けているのであれば、あなたの事務所には金融機関からいろいろな案件が持ち込まれることになるでしょう。
紹介される案件には当然、報酬単価が高く、かかる時間も短いといった「いわゆる美味しい案件」もあれば、その中には本来はあなたが取り扱っていないような業務もあるでしょうし、取り扱ってはいるものの報酬の関係からメインの業務として扱ってはいないものなど、事務所経営のためだけで考えると必ずしもプラスではないものもあることは覚悟しておく必要があります。
誰でも仕事を受けるのであれば、おいしい案件だけを選別して扱いたいというのは十分に理解できますが、現実にはなかなかそのほうにうまくは運ばないものです。
この紹介の案件をプラスとマイナスの面だけで考えて、受ける案件を選別していってしまうと、金融機関からの信頼が落ちてしまうことになるので、要注意であると言えるでしょう。
金融機関としてはせっかくこちらが持っている仕事を紹介したのにけんもほろろに断られたとなれば当然印象は悪くなりますから、もしその後に本当のおいしい案件が入ってきたときに、以前断ったことを考慮してあなたではない他の人に案件を紹介するということも考えられるのです。
金融機関からの依頼を断ることと、一般に依頼してきたお客様を断ることとは大きく違うのだということは認識しておく必要があります。
金融機関としては士業のような専門家と協力関係を築いておく必要性は感じていますが、それは別にあなたでなくてもいいのだということを理解しておくことが重要なのです。
一度でも断れば、その依頼はあなた以外の方に行くことを考えれば、一度の依頼の拒絶のダメージの大きさがよく理解できるのではないでしょうか。
士業と金融機関の従業員との交流会を自分で企画してみよう
士業のあなたは開業してから様々な異業種交流会に参加したことがあるという方が多いのではないかと思います。
最近参加したことがあるという方は、その場にどのような職業の方が参加していたかを5秒ほどで少しだけ思い出してみてください。
金融機関の従業員ってあまり参加しているのを見かけたことがないのではないでしょうか?
異業種交流会などは本来であれば新規の顧客の可能性のある方と会う可能性もあるだけに積極的に参加すれば、金融機関にとってはメリットがあると思われるのですが、不思議なことにあまり参加している人はいないようです。
その理由は一体なんなのでしょう?
理由を聞くと凄く単純なことなので、あなたは呆れるかもしれませんが、金融機関には支店ごとに活動できる範囲のようなものがあり、支店の担当者は自分が所属している支店の活動可能範囲の中にいる新規顧客を探しているからなのです。
金融機関が知り合いたいと考えているのは、活動範囲内で業務を行っている地元の専門家や地元の有力者(例:老舗企業の創業者や地元選出の国会又は地方議員など)ということになるでしょうか。
地元の専門家であればきめ細かく活動をしているでしょうから、金融機関が把握できていない新規顧客を紹介してもらえる可能性が増加しますので、付き合いを行いたいと思うでしょうし、地元の有力者も顔の広さから普段であれば金融機関がなかなか訪問できないような相手を紹介していただける可能性がありますので、やはり関係を構築したいと考えるでしょう。
地元の有力者と知り合って金融機関の担当者と交流会を開くことができれば最高とも言えますが、地元の有力者と言われる方とは、そもそも簡単に知り合うことはできないわけですから、いきなり実現をさせるということは厳しいのが現実だと言えるでしょう。
しかし、地元の専門家であれば、名簿を見れば誰がどこで活動しているかは把握できるわけですから、あなたが実際に訪問してアプローチすることで知り合いになることは可能ですし、実際に仕事面での協力を取り付けることでさらに効率よく仕事を処理できるようになることもあるでしょう。
こうやって地元の専門家にある程度の数の知り合いができたのであれば、実際にあなたが主催者となって士業と金融機関の従業員との交流会を企画してみるといいのではないでしょうか。
元々地元の専門家とはできることなら多く知り合っておきたいと考えている中で、既に支店の担当者との信頼関係が構築されている、あなたが交流会を開催すると提案するのですから、かなりの確率で交流会には参加していただけることでしょう。
専門家側から見ても銀行と知り合いたいけど難しいなと考えているところに、非常にチャンスのある場所を提供するわけですから、こちらも積極的に参加してくれることは間違いないでしょう。
このような交流会をあなたが企画して主催することで、あなたは必然的に人脈構築のなかで中心的な役割を果たすわけですから、あまり金銭や労力を必要とすることなく開催が可能な交流会はできるのであれば早速開催をしてみてもいいのではないでしょうか。
金融機関は士業を求めている!!
以上が金融機関と士業の関係を考えるうえで必要と思われるものを解説させていただきましたが、今回説明したことはすべてではありません。
しかし金融機関と士業が協力をすることは、決してあなたの事務所の利益になるからおすすめをしているのではなく、地域経済の活性化にもつながっていきますから、積極的に行っていただければと思います。
金融機関は仕事を行ってくれる士業を求めているとも考えていいのではないでしょうか。