真似できない決定的な差別化を図る

士業

士業事務所を数倍成長させる経営のポイント で、「横の競合」に勝つのは最低限のことで、事務所の成長とリスクヘッジのポイントは、横の競合と真っ向から戦わずに、それ以前に勝負をつけられるようになることだと述べました。


そんな体制作りのために、まず、これからの事務所の戦略の根本となることとして「事務所の存在理由を確立する」ことについてお話しましたが、続いて「差別化」について考えてみます。

小手先だけの差別化は厳禁!

差別化って何でしょうか?


士業事務所のホームページをいろいろ見ていくと、ほとんどの士業事務所のホームページに「他の事務所とは違います」と書いてありますが、僕にはその違いがまったくわかりません。


たとえば、「忙しい起業家を応援します」と書いてある行政書士事務所のホームページがあるとしましょう。


忙しい起業家のためにサービスを提供するならば、平日は仕事で忙しいターゲット層のために、土・日の営業をしたり、平日は夜間まで営業をするというのが、普通に考えて当然のありようではないでしょうか。


しかし、ホームページをよく見ていくと、土日は休業、夜は17時までの営業などと書いてあるサイトがたくさんあります。


そんなふうに、うたい文句をしっかりと行動や実績で裏打ちできていない、ちぐはぐな事務所が数多くあります。


そんな口先だけの事務所のホームページばかりでは、依頼先を選ぶお客様は大変です。
結局は価格などの数字で見える部分で判断するしかなくなってしまいます。

士業事務所は価格競争に陥らない差別化を戦略的に考えろ

あなたの士業事務所が価格競争など、他の事務所と数字上の勝負に終始しているうちは、いつまでも勝ち続けられる保証はありません。
突然、あなたの事務所の半分の価格で同じサービスを提供する事務所が現れたらどうしますか?


価格競争などの消耗戦を避けるためには、他の事務所がそう簡単には真似のできない点で、差別化をしていく必要があります。


あなたの想いを伝えることや、個人としてのあなたの個性を出すのも、簡単にできる差別化ではあります。


しかし、いくら熱い想いを持っているとか、学校の後輩だからという他との違いがあっても、やはりそれだけでは限界があります。


本当の差別化は、より戦略的に行っていかなければなりません。
横の競合と戦う以前に勝負がついているのが理想的です。

直接的な競合士業事務所と戦うことなく勝つ方法とは

僕の事務所にとっての直接的な「横の競合」は、同じ会社設立業務をしている行政書士、司法書士事務所ということでした。


価格の割引などをすれば、横の競合に勝って依頼をとることは可能です。
しかし、そんな市場を縮小させるような消耗戦ではいけません。


ここで発想を変えて、会社設立を依頼するお客様の行動に目を向けてみましょう。


会社設立をしようと思っているある1人のお客様がいるとします。


このお客様は、まだ、どこの行政書士事務所に依頼するか決めていません。


そこで、インターネットなどで会社設立の専門家を探しています。


この時点で、行政書士事務所にとっての「横の競合との戦い」が始まります。


もし、この後、お客様が運よく僕のホームページを見てくださり、よさそうだと思って下さったら、依頼や問い合わせの連絡をしてくれるでしょう。


でも、僕や他の行政書士事務所が、お客様が専門家を探している時点でやっているのは、「競合との戦い」と言いつつも、ひたすらお客様が連絡してくださるのを待っているだけではないでしょうか?


これは、ものすごく受け身な姿勢です。


では、お客様の行動をもっと前の段階から想像してみると、どうなるでしょう。


会社設立を任せられる専門家を探しているお客様は、きっとその前に、何かのきっかけがあったから会社を作ろうと決意したんです。


もし、このお客様に会社設立を決意させたきっかけが、会社設立を専門としている僕自身だったらどうでしょうか?


お客様は、インターネットなどで専門家を探すこともなく、決意のきっかけを与えた僕にそのまま会社設立業務を依頼しますよね。


すなわち、「横の競合と戦うことなく勝つ方法」とは、僕の場合、お客様に会社設立をしようと決意させる人になるという戦略です。

「縦の動き」で他の士業事務所と差別化する

会社設立を決意する人の中には、もともと会社を作るつもりで準備を整えていた人もいれば、何かの起業家イベントなどに参加して心機一転、決意する人もいます。


ですから、お客様が会社を設立しようと決意するタイミングを首を長くして待つのではなく、こちらから積極的に見つけに行くことができるのです。


僕は、このような将来のお客様を見つけに行くことを、「縦の動き」と言っています。


縦とは時間軸の上での縦、時間を遡ることです。


この縦の動きを、行政書士として独立開業した時点からすぐにできたら、それは素晴らしいことだと思います。
しかし現実的には、まだ実績がなかったり、集客力がないといった理由や、すぐにお金につながってくるとは限らないこともあり、事務所経営がある程度安定してから行うことを、僕はお勧めします。


この縦の動きをうまくできれば、今まで「横の競合」であったものが、もはや競合ではなくなります。
戦いが始まるより前の時点で勝負を決めているからです。

他の士業事務所との差別化のために創業融資業務を始めた理由

もう一つ、他の事務所と差別化するための考え方をご紹介します。


僕の事務所が、なぜ創業融資業務を第二の専門業務として始めたのか、その理由にもつながる話です。


ここには、いくつかの大切な考え方が潜んでいますので、よくお読みください。


開業当初に会社設立を専門にしようと決めた時と違って、創業融資業務を始める時、僕はかなり緻密に戦略的に考えました。


創業融資業務を始めたのには、大きく分けると3つの理由があります。

①会社設立業務の市場の状況、お客様1人当たりの単価の問題

②創業融資業務の市場の状況、お客様1人当たりの単価の問題

③会社設立と創業融資は必ず相乗効果が期待できること

それぞれ、簡単にご説明します。

①会社設立業務の市場の状況、お客様1人当たりの単価の問題

会社設立業務には、行政書士、司法書士、税理士、一般企業など多くの競合がいます。
年々、価格競争が進み、お客様1人当たりの単価も下がってきています。


行政書士の仕事であるというのが従来のイメージでしたが、近年は税理士がかなり力を入れてこの分野に進出してきています。


一般的には行政書士より税理士のほうが儲かりますので、資本力のある税理士が台頭してきているのが現状です。

②創業融資業務の市場の状況、お客様1人当たりの単価の問題

創業融資業務という市場は、正直、まだまだ未成熟な市場だと、僕は認識しています。


会社設立をしたお客様でさえ、創業融資業務というサービスがあることを誰も知っているわけではありませんでした。
そのため、やり方次第では、自分で創業融資のお客様を作って、市場をもっと大きくしていけると、僕は思いました。


競合の点で言えば、税理士をはじめ、行政書士や中小企業診断士、民間企業も参入していますので、厳しいことは厳しいです。
しかし、会社設立業務の市場とは違って、まだまだ、業界の明確な勝ち組のような存在は見当たりませんでした。


また、お客様一人当たりの単価ですが、僕の参入より先に創業融資をやっていた他社の料金設定などから見て、会社設立業務とは比較にならない高い料金でいけると思いました。


僕は、それらの点からチャンスがあると感じました。


会社設立業務で築いた集客のノウハウにはかなり自信がありましたし、次に説明する相乗効果にも期待できるので、絶対にうまくいくと確信しました。

③会社設立と創業融資は必ず相乗効果が期待できる

僕が創業融資業務に目を向ける前から、会社設立を依頼してくださったお客様が、たまに創業融資の相談をしてくることがありました。


「伊藤君って、融資もできるの?」


起業家が会社を立ち上げた次に、経営者としてやる仕事は、実は資金調達なのではないか?
もちろん、ほとんどの起業家は一定の資金を用意して起業しますが、その資金で十分だという保証はありませんし、たいていは資金不足を感じています。
資金が多いに越したことはないというのが、多くの経営者の一致する考えでしょう。


そこで僕は、会社設立のお客様は、その直後に融資を申し込むという仮説の下、創業融資業務を第二の専門業務としてやれば、会社設立業務との相乗効果はものすごいものになると確信しました。


会社設立のような、どの行政書士事務所に任せても同じ結果をたいがいは得られる業務と異なり、融資業務は任せる事務所の良し悪しで結果の変わる、行政書士の業務の中では異色のものです。


そのため、お客様からすれば、会社設立をよいサービス内容でやってくれた信頼の置ける行政書士事務所に任せたいと考えるのではないかという仮説が成り立ちます。


また、起業家は、会社設立の前から資金調達について考えています。


そのため、創業融資に強いという評判がつくことで、その前の会社設立業務も含めた依頼を検討しているお客様に出会うことができると考えました。


あれ?これはもしかして。


そうです。
ちょっとした「縦の動き」と言えますよね。


また、元々は会社設立業務の依頼しか検討していないお客様であっても、行政書士事務所を選んでいる最中に、創業融資というものがあることを知っていただくことができれば、会社設立しかできない他の事務所ではなく、会社設立と創業融資の両方ができる僕の事務所から一度話を聞いてみようかと思ってくださるのではないかという期待もありました。


いくつか理由を書きましたが、一つの大きなポイントは、創業融資業務が行政書士事務所の良し悪しによって結果の変わる仕事であるという点かもしれません。


お客様に、「この人(事務所)にしかできないんだ」と思わせることのできるサービスを持つ方法を考えるのが大切です。

起業セミナーで他の士業事務所と差別化

「縦の動き」をご紹介します。


僕の事務所にとってのお客様とは、「会社設立をする人」が前提となります。


そこでまず、会社設立を決意させる役割を僕が担うことが大切だということを先に述べました。
これはそんなに難しいことではありません。


例を挙げれば、起業セミナーを開くのがその1つです。


起業に踏み切れない人の多くは、自信に欠けています。
起業して成功できる人は、特殊な才能のある人だと思い込んでいます。


しかし、僕自身を含め、決してそんなことはありません。
それを知ってもらうために、起業で成功している人の話を聞く機会を設け、「自分と同じような人でも成功できるんだ」と自信をつけて帰ってもらいます。


もちろん詐欺ではありませんから、誰でも簡単に成功するなんて話はしません。
起業して成功する人は、間違いなく一部の人間に過ぎません。
しかし、その成功に努力は不可欠ですが、先天的な才能が必要条件かと言えば、決してそうではないということを知っていただきたいのです。
そして、今は成功している人も、起業する前には同じように悩んでいたことなどをお話ししていただくんです。


起業セミナーに講師としてお呼びする起業家は有名人である必要はありません。
セミナー参加者と同じ目線で話してくれる起業家が望ましいです。


このような機会をきっかけにして、起業を決意される方も大勢います。


そして、このような起業セミナーを開催するメリットは2つあります。


1つは、「縦の動き」ができ、他の事務所と差別化ができることです。


もう1つは、僕の事務所が、ただ依頼されるから会社設立業務をやっている事務所ではなく、本当に起業家を支援し、起業家がもっと日本に増えることを考えている事務所だと、周りから見ていただけるようになることです。
これもある種、他の事務所との差別化になります。

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