士業として独立開業をしたあなたも、これからしようとしているあなたも、一生士業としてやっていこうと思っていませんか?
士業を続けることを、一生の目的なんかにしないでください。
士業というのは、あなたがなりたい姿、やりたいことを実現するための手段にすぎません。
「でも、そうは言っても、士業としてそこそこ儲けて、できれば一生食べていけるようになるだけでも上々なんじゃないのか」
そうお考えのあなた。
ぜひ、ご一読ください。
考え方を少し変えていただくだけで、士業の資格を使って長いことご飯が食べていけます。
士業は早々に引退
士業を法律家の先生だと考えてはいけないと、01ゼロイチ侍では繰り返してきました。
独立開業した時点では起業家であるという意識を持ってほしいと勧めてきました。
起業家とは、ゼロから集客の仕組みをつくる人です。
どんなビジネスでも、お客様が安定して来てくださることが基本になります。
集客の仕組みづくりに完成はありません。
事業を続ける間は常に改善していく姿勢が欠かせません。
ただ、集客の仕組みが一定段階まで進み、お客様からの依頼が増えてくると、ある判断をする必要に迫られます。
それは、人を雇うということです。
なぜ人を雇うのかと言うと、あなたの時間を作るためです。
自分一人ではこなすのが手いっぱいになってきた業務依頼を、スタッフに任せられる部分は任せることで、あなたがもっと費用対効果の高い仕事をするためです。
あなたの時給を上げ続けるためです。
そして、人を雇うことを選択したあなたは、もはや個人の士業ではありません。
組織のトップになります。
経営者になったのです。
「自分は人は雇わないで、自分一人でずっとやっていくんだ」
そう考える人もいると思います。
しかし、一人で目いっぱい実務をこなした結果、事務所がずっと現状の体制から変わらずにいるのは危険です。
結局は人を雇うほうが、あなたが士業として稼ぎを上げ長く続けていける可能性が高くなると僕は確信しています。
経営者の視点を取り入れる
人を雇うと、あなたには雇ったスタッフの管理、いわば「マネジメント」の仕事が新たに発生します。
そもそもマネジメントって何でしょうか?
これには答えはないかもしれませんが、僕自身は、自分とスタッフも含めた事務所にある資源(カネ、モノ、ヒト)を使って、利益を最大化する手段 だと考えています。
では、マネジメントはなぜ必要なのでしょうか?
「人を雇う」ということは、ある種の投資です。
投資というのは、投下した資源以上のものを生み出さなくては損をします。
スタッフを雇用する場合は、毎月給料を支払います。
ですから、支払っている給料以上の何かを、そのスタッフに生み出してもらう必要があります。
でも、給料以上の何かを、スタッフに自力で生み出してもらうのは、現実的にはなかなか難しいものです。
自分一人の給料分ですら満足に稼ぐことができない士業が多いのですから、スタッフにそれを求めるのは酷かもしれません。
そこでポイントとなるのは、あなたの時間を作るために人を雇うんだという発想です。
どういうことか。
集客の仕組みづくりが一定段階まで進むと、事務所はその依頼をこなすことで忙しくなります。
すなわち実務作業で忙しくなります。
いくら専門業務を絞ってノウハウを蓄積し業務を効率化すると言っても、一定の時間×件数は確実にかかってしまいます。
依頼件数が増えて忙しくなればなるほど、業務でトラブルが起きる可能性も高まります。
そんな中で、一人の人間ができる仕事量にはやはり限りがあります。
こういう、依頼で忙しい状況は、当事者からすると一見非常に嬉しい状況です。
しかし、ここが落とし穴なんです。
このままの状態が続くとどうなるでしょうか?
実務作業が忙しいと、集客の仕組みを改善したり、業務の効率化を図ったり、2本目、3本目の柱にするための新しい専門業務へ進出するための時間を捻出できません。
あなた一人では、売上はいずれ頭打ちになります。
むしろ、外部環境が変化する速度は現代においてはあっという間ですから、今までのやり方が通じなくなったり、競合が現れたりする危険があります。
そのため、徐々に依頼が減っていきます。
しかし、実務に追われるあなたは、すぐにはそれに気がつかず、依頼がなくなる頃にようやく、自分が落とし穴にはまったことを知るのです。
今やっていることを、それでよいのかと常に疑い、改善してやったことを、またチェックして…というサイクルを回す必要があるのです。
そのためには、やはり、受注した依頼の実務をこなす時間だけでなく、事務所の体制のチェックと改善のために使うあなたの時間を確保して将来にわたって利益を最大化する必要があります。
その時間を作るために、人を雇うのです。
これはまさに、最初に定義づけたマネジメントではないでしょうか?
士業事務所だけでなく大きな会社の創業者も、最初はみんな、実務をやりながらマネジメントもしなくてはいけないプレイングマネージャーでした。
ですが、マネジメントは専門的な領域で、意思決定と実行には時間がかかります。
事務所の規模の拡大に応じて、プレイングマネージャーから徐々に、マネジャーに移行する体制を作ることが大切です。
それが「士業を引退しましょう」という言葉の本意です。
スタッフとの役割分担
士業事務所には、大きく2つのやるべき仕事があります。
1つは、受注した依頼を完遂するための実務作業
もう1つは、マネジメント(経営)です。
このうち実務作業は、本書の道筋に従っていれば、あなたが一人で業務をやっていた期間にかなり効率化しているはずです。
そのため、新しく雇った人でもできる仕事になっているはずです。
士業のたいていの業務の実務は、新しく雇った人でもすぐに仕事ができるくらいシンプルに、効率的にすることができます。
イメージがうまく浮かばない人は、マクドナルドのお店を想像してください。
社会経験のない高校生でも、ビジネスの現場から長く離れていた主婦の方でも、誰がアルバイトとして新しく入ってきても、迅速に注文をとって、ハンバーガーを作り、お客様をほとんどお待たせせずに提供することができていますよね。
効率的な業務のしくみ作りができていれば、特別なセンスや豊富な経験がなくても実務はできるようになるのです。
実務作業については、そんな仕組みを目指してください。
しかし、今の仕組みを改善したり、新しい業務を作り出すのは、誰にでもできるわけではありません。
それがマネジメントの仕事というものです。
人を雇う段階まで進んできたあなたには、起業家として、運営者としての経験があります。
ですから、そんなマネジメントの仕事は、事務所の中であなたにしかできません。
事務所の戦略や戦術を考えることは、すなわち経営です。
あなたは士業から経営者にならねばなりません。
実務はどんどんスタッフに任せていく
僕の場合は、自分が実務で手いっぱいになる、そのだいぶ前にスタッフを雇いました。
創業融資業務を事務所の第二の柱にしようとし始めた時期で、会社設立業務以上の市場の可能性の高さを感じていたのです。
会社にはそれぞれ、その会社の利益を支えるポイントとなる業務があります。
有名な事例ですがプリンタのメーカーは、プリンタを安く売って、その専用インクを売ることで利益を上げています。
このように、自分の事務所の儲けるポイントを決める必要があります。
僕の場合は、それを会社設立業務だとは考えていませんでした。
・会社設立をやっている競合の行政書士事務所が多いこと
・お客様からいただくことができる報酬が安いこと
この2点が理由です。
会社設立は、プリンタメーカーにとってのプリンタのように、お客様との出会いを作る入口の業務だと位置付けて、儲けるポイントを創業融資業務に置こうと決めました。
そのために、会社設立の集客源を作り業務を仕組み化した開業当初の半年間のような、実務以外の仕事をする時間―すなわちマネジメントのために使う時間―が何よりも欲しかったのです。
そこで、僕自身の時間を生むために人を雇うことにしました。
そして、会社設立業務の集客源の強化策として、他の士業の先生からの「紹介」による集客を強化することに力を入れました。
会社設立を依頼してくださったお客様は、創業融資業務を次に依頼してくれる可能性が高いためです。
また、集客源として、創業融資のホームページを、会社設立のホームページとは別に、ゼロから作りました。
もちろん、創業融資業務の効率化も一生懸命考えました。
その結果、現在、創業融資の分野の取扱件数で、日本でも間違いなくトップクラスの専門事務所となることができました。
創業融資の1件当たりの単価は、会社設立の1件当たりの単価の4倍くらいになり、当初の僕の計画どおり、創業融資業務は僕の事務所の稼ぎ頭となっています。
しかし、そんな一定の仕組みができあがった段階までで満足してしまうと、そこで終わりです。
日々、業務を改善をし、効率化とお客様の満足度を上げる方法を考えています。
そして僕は、会社設立の実務こそスタッフに任せられない必要部分だけはやりますが、創業融資の実務はほとんど自分でやらなくても回るようになりました。
僕は経営者であって実務家ではないという意識の下、経営の数字で見ての改善と成長のために、自分の時間を使っています。